最近「遮熱」という言葉が建築業界で聞かれるようになりました。また「遮熱塗料」や
「遮熱材」といった新商品もたくさん発売されています。で、私も「ローコストで
高性能が得られるものはどんどん採り入れていく」という考えをもっているので
いろいろと調査、実験及び検証をしてみたのでその結果を述べてみたいと思います。
まず基本からいきますが、熱の伝わり方には「伝導」「対流」「放射(輻射)」
の三つしかありません。それぞれ分かりやすく説明すると
伝導・・・熱いものに触れると熱が伝わってきて熱い、逆に冷たいものに触ると熱が
奪われて冷たいといったような現象、今の断熱という言葉はほとんどこの伝導を
いかに少なくするかということを主眼に考えられている。
対流・・・これはエアコンの風のように温風や冷風などによる熱の伝わり方です。
放射(輻射)・・・基本的に熱は真空中では伝わらないはずですが、実際に
太陽の熱は地球に届いています。これは太陽が放つ電磁波の成分のうち熱に
関するものが電磁波として地球に届きそれが熱として現れるからです。これを防ぐため
には例えば車のフロントガラスにプチプチの上にアルミを貼り付けたような
商品を皆さんよく使いますがあのようなものをおいてやると放射による熱の
伝達はかなり少なくすることができます。このときのアルミの日よけが
いわゆる最近よく聞くところの遮熱材です。熱量をもつ物体は全て熱効果の
ある電磁波を放っています。この効果をねらった暖房機器の代表が電気
ストーブです。よって電気ストーブはその真ん前で電磁波がよく当たる位置
にいると非常に暖かい反面、背中は寒いといったようなことが起こります。
ちなみにアルミのような電磁波を遮る効果のあるもので携帯電話を完全に
くるんでやると電波が届かなくなります。(ただし実際の家庭で遮熱材を
使った場合は窓などから電磁波は入るので携帯は使えます。)
要するに 断熱=伝導による熱の伝達を抑える。
遮熱=放射(輻射)による熱の伝達を抑える。
ということになります。断熱に関しては大学等の研究機関も過去長きにわたって、研究
データや論文が山ほどあるのですが、こと遮熱に関しては、私の友人で熱環境の博士に聞
いてみても全くといっていいほど論文を発見することができません。インターネットに出
ている情報も遮熱材を販売する側のデータばかりでしかもその内容には出自が不確
かな物や、明らかに熱環境工学が分かってないものの多く、とても信頼できるものではあ
りません。
こうなったら自分で実験してみるしかないと思い、30cm四方程度のBOXを
ウレタンフォーム50mmで囲んだものと、遮熱材で覆ったものの二つを用意し、早速実験
を行いました。その内容は
@夏の日射のきつい日の昼間を想定した実験
全く同じ条件で、前に電気ストーブを置いたときの内部の温度上昇を測定しました。
この状況では伝導による熱の伝達よりも輻射による伝達のほうが多いと考えられます。
A厳寒期の冬の夜(日射がない)を想定した実験
全く同じ条件で、二つの箱を冷蔵庫に入れ室温から冷蔵庫内と同じ温度に下がるまでの
温度の下がり方を測定しました。
以上の2つの実験の結果ですが、
@の実験結果
・若干ではあるが遮熱材のほうが温度上昇を抑えられる。
・スイッチをオフにしたあとの温度の下がり方は遮熱材のほうが早い。
Aの実験結果
・温度の下がり方は圧倒的に遮熱材の方が早い。
・冷蔵庫から出した後の温度の上がり方は圧倒的に遮熱材の方が早い。
厳密を期した実験ではないので実測データの公開はなしとしますが、上記のような
結果が得られました。この結果から私が考えるには、「晴天時の夏の昼間のような
太陽からの輻射が熱伝達の大部分を占める環境では遮熱材は効果がある」が、
「冬の夜のような伝導が熱伝達の大部分を占めるような環境ではほとんど効果がない」
というのが実情ではないかと考えられます。
よって、結論としましては
「遮熱材を単体で使うと、冬の断熱性が不足により快適な環境が維持しにくい
と考えられるのでお勧めできない。」
「通常の断熱をきちんと行った上でより、夏の環境をよくしたい場合にあわせて
使うと昼間の暑さを緩和できると同時に、日が落ちた後の急速な温度低下も期待できる。」
といえると思います。