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●光と風を取り入れる●



「光と風を取り入れる」

これはまさに「窓(もしくは戸)をどこにどれだけは位置するか?」
ということに直結します。ここでいう「光」とは私は太陽の光という
意味だけではなく外の景色、外とのつながりを感じる開放感もふくめて
「光」と考えます。「光」が入るところはとりあえず
「外壁の中でもサッシの部分です。」「風」が入るところは
「サッシの中でもFIX以外の開閉機構をもつサッシ」 の部分でしかも
その部分が「開いているとき」にのみ風は通ることができます。

一般的にこの二つは正確が大分違います。
「光」は年中たくさんほしいかというとそうではなく、 冬はたくさん
欲しいが、夏は必要最小限に抑えたいものです。 「風」は春秋は適度
に欲しい、夏はたくさん欲しい。冬は全然欲しくないものです。

このようにふたつの「光」と「風」というものをサッシというひとつの
部品から取り入れようとするのですが、風に関してはもう一つ入って
くるところがあります。それは換気口です。今は春夏秋冬季節を問わず、
全ての新築住宅に24時間換気が義務付けられています。窓を開けて
いようがいまいが、風(空気)はある程度はいってきます。


これらの複雑な条件を季節ごとに調節するために設計者は頭をひねります。


ここからは「光」を中心に話したいと思います。
私も設計を行う上で、大きな一枚のガラスを大胆に使うデザインは非常に
好きです。しかし住宅においてそれをお施主様に勧めるかというと、よほど
お客様が望まない限りは勧めません。店舗や公共施設等でほとんど全面
ガラス張りのような建物も見受けられます。これらの建物は、外観も中から
見たときの開放感もたしかにすばらしいです。では、温熱環境や、
ランニングコストはどうなるでしょう?

店舗などはイメージ重視でお客様を呼び込めさえすれば、空調コスト等は
あまり気にせずに設計を行うこと多いと思います。ましてや公共施設に
おいてはランニングコストどころかそれ以前に採算性すらあまり考慮しない
建物が多いことは周知の事実です。「窓が多ければ気持ちがいい」
(光も風もたくさん通ります。)しかし「温熱環境(暑さや寒さ)と
ランニングコスト(光熱費)は窓が少なければ少ない程いい」といえます。

この二つの条件は確実に相反する条件です。なぜこのようになるかというと
壁の部分に比べて窓(ガラス)の部分の方が面積あたりの熱が出入する量が
圧倒的に多いからです。(あとで詳しく説明します)この数字を
「熱貫流率」といいます。

最近窓(ガラス)の性能が上がってきてペアガラスは建売住宅でも標準に
なってきています。ただ気をつけていただきたいのはペアガラスでも
いろんな種類があるということです。

以下順に述べてみます。

まだ細かく分類するとさらに分かれますが、ひとえに「ペアガラス」といっても
空気層2ランク、サッシ枠4ランク、ガラス3ランクとして2×4×3=24ランクの
分類が可能となります。

もしあなたが買おうとしている家のサッシが「ペアガラスなので断熱性は高いですよ」
といわれているのならどのランクのものか理解されているでしょうか?

結局正確にこれらを判断しようとすると、「熱貫流率」でしか正確な断熱性は
判定できないことになります。

本題から少しずれてしまいましたが外壁に関しても同じことが言えます。
要は営業トークではなく窓、壁それぞれの「熱貫流率」でしか正確な評価はできません。
最近一番多いのが「うちは○○断熱材をつかっているから断熱性がよい」という論調です。

この言葉にはあまり意味がありません。
なぜなら断熱性は「厚み当たりの断熱性×厚さ」でしか評価ができないのですから・・。
つまり高性能な断熱材も薄ければそれなりの効果しかでませんし、逆に一般的な断熱材でも
厚みさえあればそれ相応の断熱性は確保できるのです。

じゃあ「窓と壁は最高の断熱性のある仕様にしました。」
これで断熱性の高い家になるでしょうか?
答えは「おおかたなるでしょうが、必ずとはいえません。」です。なぜならそれぞれの
仕様がよかったとしても冒頭で述べたとおりあまりにも窓の面積が大きすぎると家全体
の断熱性は下がってしまうからです。


この家全体の断熱性を表す数字としてよく世間で耳にするのが「Q値」です。


ではなぜ窓が多いとQ値は悪くなるのでしょうか?
それは冒頭でも述べたとおり壁の部分に比べて窓(ガラス)の部分の方が面積あたりの
熱が出入する量が圧倒的に多いからです。具体的にいうと「最高レベルのサッシでも
最低レベルの外壁にすらまるで及ばない。」
といえばわかりやすいでしょうか。

住宅メーカー等はよく「当社のこの商品はQ値=2です。」といったような言い方を
しますが、仕様が同じでも窓の量やプランによってQ値は変わるので、これはあくまで
代表的なプランにおける数値です。よって窓を極端に多くすれば当然Q値は悪くなり
その結果「暑さ寒さの厳しい、光熱費のかかる家」に近づいていくことになります。

極論すれば、窓の一つもない住まいが「暑さ寒さの緩やかな、光熱費のかからない家」
になりますが、そんな家にはだれも住みたいとは思いませんし、建築基準法上建てる
ことすらできません。

結論としては、設計者はただデザインするだけではなく、自分が設計する家のそれぞれ
の仕様の断熱性を把握した上で、予算、Q値等の折り合いをみながらデザインしていくこと
が求められると思います。
私は寒がりで、暑がりでしかもあまり暖房や冷房に頼らない
快適さがよいのですが、それでも大きな開口部のもつ雰囲気も十分に魅力的だと感じます。

よってお客様に提案するときもメインの場所にしぼって開口部を大きくしたり、もしくは
開口部を必要以上に大きくするときはその分仕様を上げる等の設計上の、検討を行うよう
にしています。
もちろんQ値の計算も行います。ヨーロッパではこのような設計手法は
あたり前と聞きます。しかしながら日本ではこのような観点で設計が行われることは
あまりないのが実情です。

デザインがよくても寒いし、光熱費も高くつく家がほしいでしょうか?
暖かく光熱費も安いが、なんの魅力もないような家がほしいでしょうか?
住宅を設計する上ではこのジレンマの妥協点をどこにもっていくのか?
いつになっても設計者にとっては頭を悩ませる問題です。


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